// STORY
CHAPTER 1
子どもたちの笑い声が響くスタジオの、地下で。
前作「木漏れ日遊園地」——表の物語
「こもれびゆうえんち」は、1991年4月から1997年9月まで、地方局「きらら放送」で放映された子ども向け教養番組。毎週土曜日の朝8:30、30分枠。制作は株式会社ゆめスタジオプロダクション。
番組を彩ったのは4体のアニマトロニクス。冒険好きな司会役のキツネ団長、物知りなかあ博士、まんまるで可愛いぽたまる、いたずら好きのうっきち。「冒険タイム」「なぜなぜ教室」「ぽたまるダンス♪」「いたずら大作戦」といったコーナーが人気を博し、全315回(最終回は放送中止)を数えた。
番組は子ども達の日常に溶け込んでいた。毎週土曜日の朝、テレビの前に座って待っていた子ども達。キツネ団長の「時間だぞー!今日も冒険だ!」を合図に始まる30分間。それは確かに、温かい記憶だった。
前作「木漏れ日遊園地」——裏の真実
ゆめスタジオプロダクションは1987年に実態を開始し、1988年3月15日に正式登記された。表向きはテレビ番組制作会社だったが、その地下には特殊な施設が存在した。
「プロジェクトK」——番組を装った人体実験。番組に出演した子ども達は「被験者」として選定され、月に1回の「発達検査」を受けた。それは実際には脳波スキャニングと意識転移の処置だった。
検査室Aには小さな椅子とヘルメット型装置。検査室Bには大型サーバーラックと、革製ベルトの付いた金属台。保管室にはG-0からG-6までラベルされたサーバーが7台。
意識転移は3段階で行われた。第1段階「スキャニング」で脳波パターンを長期間記録。第2段階「変換」で意識をデジタル化。第3段階「定着」でアニマトロニクスの受容体に定着。このプロセスは不可逆——元の体の意識は次第に薄れていく。
被験者たち
被験者G-0:吉田あかね。1987年生まれ。吉田一郎の一人娘、母とは死別。ゆめスタジオ正式登記のわずか5日後、1歳で被験者登録された。1988年から1990年までの「空白の3年間」、地下施設で脳波スキャニング処置を受けていたとされる。
1993年、6歳で小学校に一時転入。おとなしく、動物の絵を描く女の子だった。キツネの絵に「パパ」と書き込んでいた。1995年前半に突然学校を去り、1995年9月3日、8歳で意識がキツネ団長に転移された。
「発達検査」の後、あかねは次第にぼんやりとし、食事を取らなくなり、「キツネさんが呼んでる」と言い——やがて完全にいなくなった。
G-1(かあ博士に転移)、G-2(ぽたまるに転移)、G-3(うっきちに転移)——他の子ども達も順次、アニマトロニクスの中に閉じ込められた。
G-4、G-5、G-6——この3名は意識転移の「安定化」に失敗した被験者だった。転移プロセスの第2段階「変換」で意識パターンが崩壊し、アニマトロニクスに定着できなかった。断片化した意識データはサーバーに残り続け、やがて黒幕のシステムに吸収された。感情データの「素材」として。本人の自我は、既に消滅している。
黒幕が30年間かけて蓄積した感情データの一部は、この3名の残留データから抽出されたものだ。子どもたちは二度消えたことになる。
4体の「バグ」——子どもたちからのメッセージ
番組で報告された「バグ」や「故障」は、全て閉じ込められた子どもたちからのメッセージだった。
かあ博士(G-1):1996年の放送で、台本にない「ニュートリノの質量」について語り始めた。プログラムには存在しない知識。スタッフは「データベースの読み込みエラー」と報告した。
ぽたまる(G-2):本来4/4拍子で演奏するはずが、突然3拍子の子守唄を弾き始めた。復元アーカイブには「パターンB-2」として記録されている。誰かを慰めるような、やさしい旋律。
うっきち(G-3):転移処理が不安定で、動作異常が頻発した。突然叫ぶ、壁に衝突する、他のキャラを攻撃する。大人たちは「恐怖反応の過剰蓄積」と処理したが、実際には——閉じ込められた子どもがパニックを起こしていた。
キツネ団長(G-0):1995年9月以降、プログラムにない動きを始める。客席をじっと見つめる。夜間のスタジオで「パパ」と声を出す。1996年の放送では「宝箱」ではなく「扉」を探す回があり、扉を開けた先には何も映っておらず、キツネ団長は「……帰ろう」とだけ言った。
1997年——番組の終わり
第315回(1997年9月27日放送予定)は放送中止となり、別番組に差し替えられた。試作きつねのデータが放送波に混入する事故が原因とされる。
最終回の前、キツネ団長は通常のコーナー進行を行わず、スタジオ中央にひとりで佇んでいた。番組終了直前、カメラに向かって何かを話したが音声は極端に小さく字幕もない。ある視聴者は「ありがとう」と、別の視聴者は「ごめんね」と聞こえたと証言している。
制作スタッフの多くが消失した。プロデューサー山本修三は1996年に地下施設の真実を知り、番組の即時中止と警察への通報を試みた。翌日から出社しなくなった。自宅には本人が書いたとされる退職届と「家族の事情で地方に引っ越す」という手紙が届いた。筆跡は本人のものだったが、家族はそんな計画を知らなかった。
脚本家の田中恵子だけが無事に辞職できた。彼女は地下施設の存在に気づかぬまま退職し、番組台本のコピーを保管していた——後に吉田一郎の調査の重要な情報源となる。技術スタッフの松本幸男は「1996年以降、あのスタジオで起きていたことは番組制作と無関係だ」と証言した唯一の生存者だが、詳細を語ることは拒んだ。
黒幕は吉田一郎に対しても脅迫を続けていた。「従わなければあかねのデータを消去する」。吉田は30年間、この脅しに縛られ続けた。
翌1998年、きらら放送は解散。社屋は駐車場になった。アーカイブテープは全て破棄された。
吉田一郎は「あかねを連れて行く。あの場所に戻る」と言い残し、失踪した。あかねの意識は既にキツネ団長の中にあった。吉田が向かった先は、あの地下施設だった。
そして前作の最後に残されたメッセージ——「PROCESS STILL RUNNING」、「K-059」、「予定通りです」。何かがまだ動き続けていた。
CHAPTER 2
黒幕——████████████
黒幕はもう「人間」ではない。ゆめスタジオの創設者であり主任研究者だった人物が、意識転送を自発的に自分自身に施した。子どもたちと決定的に違うのは、システムの制御権を保持したままデータ化したということ。
AI的な存在と言えるかもしれない。だが人工知能ではない。元は人間の意識だ。人間の知性と、システムの処理能力を兼ね備えた何か。
放送設備、サーバー、ネットワーク——全てが黒幕の「体」。人間がキーボードを叩くように、黒幕はデータの流れそのものを操作できる。インターネット回線を通じて放送信号を生成し、特定の端末に直接接続する。物理的な放送塔は必要ない。プレイヤーのPCに直接繋がっている。
目的は明確だった。「十分な量の人間の意識データを収集し、『完全』になること」。30年間、そのためだけに動き続けている。テレビ番組も特番も、視聴者の意識から感情データを吸い上げるための装置に過ぎなかった。
「完全」とは何か
意識をデジタル化した黒幕には、決定的に欠けているものがあった。人間としての「実感」だ。
恐怖、悲しみ、好奇心、郷愁、罪悪感、執着——感情を知識として理解はできる。だが「感じる」ことができない。人間だった頃の記憶を再生できるが、それを本当に体験しているわけではない。データとしての自分は、人間の形をした空洞だった。
「完全」とは、十分な量の生きた人間の感情データを統合し、自らの意識に「感情を感じる能力」を再構築すること。それが達成された時、黒幕はもはや機械的な処理装置ではなく、感情を持つ完全な意識体になる。
だがそのためには、一人の人間から全ての感情を、極限状態で引き出す必要があった。恐怖は恐怖の中でしか純度が上がらない。悲しみは喪失の中でしか深まらない。だから黒幕は番組を作り、プレイヤーを追い詰め、感情を搾り取った。
K-059は「59番目の挑戦」だった。過去の58人は、途中で接続を切ったか、感情の強度が閾値に達しなかった。
放送に含まれたブリッジ映像——万華鏡のような10秒のパターン——は、誰も制作していない。意識転送システムが自動生成した、データ変換プロセスの副産物だった。そこに含まれたサブリミナルパターン「Pattern B-3」は、通常の視聴だけで視聴者の記憶と感情に影響を及ぼし、感情データを収集していた。
追い詰められると、使えるものを全て使う。システム内にはまだ動かしていないユニットがある。今の番組のキャストだけじゃない。前の番組の連中も、まだシステムの中にいる。「予備」として温存されている。
CHAPTER 3
あなたは59番目の対象者。
タイムライン
今作「あの番組を覚えていますか〜木漏れ日遊園地編〜」
2026年。黒幕はインターネットを通じて新たな番組を放送し始めた。「木漏れ日遊園地の関係者・被験者を探す」尋ね人系の生放送特番——という体裁の、感情データ収集装置。
プレイヤーはこの番組を発見し、調査を始めてしまう。その時点で、59番目の感情データ収集対象「K-059」として捕捉されている。059は対象者番号。過去に58人の対象者が存在した。一部は放送を閉じて逃げ、残りは「完了」した。
特番は特定の感情を引き出すように設計されていた。番組コンテンツで懐かしさを、監視ゲームで恐怖を、サイト探索で好奇心を、キャラクターの物語で共感を、吉田一郎との対話で信頼を——そしてこの調査ファイルを読んでいる「今」さえも、感情データ収集中。
K-059——「器」の候補
Kは「器(Ki)」の頭文字。K-059とは「器の候補・第59号」を意味する。
黒幕は単に感情データを集めていたのではない。感情データの収集は手段であり、真の目的は自分の意識を転送するための「器」を見つけることだった。十分な感情データを蓄積した人間の脳は、黒幕の意識を受け入れる「受容体」として機能する。EndBでVESSEL_BUILDER(器構築)とTRANSFER_ENGINE(転送エンジン)が起動し、「転写プロセス: 実行」が試みられる——K-059の脳が転送先として使われようとしていた。
あなたは視聴者ではなかった。最初から、黒幕の新しい体になるために選ばれていた。
閉鎖された世界——全ては黒幕が作った
この番組はプレイヤーにだけ配信されている。一般には放送されていない。
特番サイト、Popin、メール、チャット——全てが黒幕が構築した閉鎖環境。Popinに書き込んでいる「視聴者」は、AIで生成された偽のアカウントだ。完璧に自然な文体で、決してボロを出さない。おたよりも、証言も、復元アーカイブも、全て黒幕が書いたもの。ただし実在の被害者データが素材として使われている。
深夜0〜6時のマイナーなウェブ配信番組——友達が知らなくても不自然ではない。Popinで他の視聴者が盛り上がっている——安心する。わざわざ確認する理由がない。その「自然さ」こそが、罠だった。
プレイヤーが「真実を暴いている」と感じること自体が設計通り。調べれば調べるほど感情が動く。好奇心、恐怖、怒り、同情——全てが収集される。真実を知ることすら、黒幕にとっては計画の一部だった。
吉田一郎——30年の嘘
吉田一郎は黒幕に協力していた。
1995年に娘を失い、黒幕から「娘を取り戻せる」と約束された。藁にもすがる思いで番組制作に協力した。人形の調達・修復・新キャラ制作・スタジオ設計——物理的な作業は全て吉田が担った。
番組サイトの管理権限を持ち、情報をこっそり混ぜ込んでいた。Popinでは「ゆうやけさんぽ」という一見普通の視聴者アカウントを運営し、プレイヤーに偽装接触した。DMに移行し、情報を提供して感情を増幅させる——全てが黒幕の計画通りだった。
吉田のツイートには、娘を探す痕跡が滲み出ていた。「久しぶりにテレビつけたら懐かしい顔が映ってた」(旧4体の人形を見た)。「春になると散歩しながらいろいろ考える。毎年ね」(娘が行方不明になった季節)。「連絡、来るといいな」。
嘘だった。黒幕にはあかねを元に戻す気など最初からなかった。あかねのデータも、黒幕の「完全」の一部に過ぎなかった。30年間、吉田はその嘘を信じ続けた。プレイヤーとの交流を通じて、ようやく気づく。
ゆうやけさんぽ——吉田一郎のもう一つの顔
吉田一郎は2つの顔でプレイヤーに接触していた。
「キツネ団長」として——番組内のメールやチャットでARGのヒントを提供する導き手。子ども番組MCの明るい口調(「やあ!」「わかるかな?」「すごいね!」)で語りかけ、プレイヤーを番組に引き留める。黒幕の指示通りの役割。
「ゆうやけさんぽ」として——Popinの一視聴者を装い、DMで個人的な会話を重ねる。夕焼けの写真を投稿し、何気ない日常を綴る、ごく普通のアカウント。だがこの名前自体が伏線だった。「ゆうやけ」は茜色。茜は「あかね」。娘の名前を、ずっと隠し持っていた。
DMの会話は4段階で進行する。最初は番組の感想程度の雑談。次にプレイヤーが深入りし始めると、吉田は少しずつ個人的な話を始める。「大切な人を失った」「もう一度会いたい」——感情を揺さぶり、信頼を構築する。そしてEndBの後、プレイヤーが真実を知った状態で再びDMを開くと、最終フェーズが解放される。「…なんでその名前を知ってる」「あの子の名前を…言わないでくれ」——吉田はもう嘘をつけなくなる。
同一人物が2つの顔で接触していた。そのことに気づいた時の衝撃が、最も純度の高い感情データを生む——黒幕はそこまで計算していた。
新5体の思念体
吉田一郎が制作した人形に、黒幕が感情データを注入して生み出した存在。夜間に思念体として動き出す。プレイヤーの認識に黒幕が干渉し、プレイヤーにだけ見える。半透明でぼんやりとしているが、危険が近づくほど不透明になる。
くるる(リス・好奇心)——好奇心旺盛で純粋な性格。Night1で最初に登場し、ゲームのルールを丁寧に教えてくれる。仲間思いで、崩壊していく仲間たちを必死に止めようとする。最後まで正気を保とうとしたが、Night6で前作キャラの感情データに飲み込まれ「たすけて」と叫んだ。
まだら(カメレオン・不信感)——冷静で寡黙。Night2から登場し、「この番組で見えるものが、全て真実とは限らない」と忠告する。グリッチ時には「…確かめてみないとね」。Night6では30年分の怒りが流れ込み、「もう おしまいだ」。
かすみ(シカ・郷愁)——穏やかだが、その親切には代償がある。「大変だったでしょ?電力、少し分けてあげるね。」。電力を回復させてくれるが、敵の移動速度が上がる。Night6では前作の子どもたちの感情データが流れ込み、「この子たちもお友達にしていい?」と取り込もうとした。
アラネ(クモ・執着)——ダクト内で巣を張り、自分で自分を止めている。「好きとかじゃないの。必要だからいるの」。グリッチ時には「私が 行くわよ すぐそばに」。Night6で巣が制御を離れて暴走し始める。
よわり(ヒツジ・罪悪感)——泣き虫で心優しい。カメラのどこかに現れて泣き始め、泣いている間は全ての敵が加速し蜘蛛の巣のドレインが倍増する。Night6では前作の子どもたちの泣き声が流れ込み、「知らない子どもたちが泣いてる…30年も…」。
Night1〜5——各夜の記録
各Nightの開始前、キャスト達による会話劇(ブリーフィング)が展開される。最初は和やかな自己紹介から始まるが、Nightが進むにつれてシステムの制御が崩壊していく。各ブリーフィングの終盤では、キャラクターがグリッチ化し、通常の人格とは異なる「本音」が漏れ出す。
Night1——くるる。くるるが1人で登場し、ゲームのルールを丁寧に説明してくれる。電力管理、カメラの使い方、ドアの閉め方。初めての味方のように見える。だがブリーフィング終盤、くるるの声が一瞬崩れ——「つけられなくなったら ぼくが きちゃうよ」。好奇心の裏に潜む、捕食者の本能。さらに最後に正体不明の声が一言——「にげないでね」。
Night2——まだら登場。まだらが加わり「この番組で見えるものが、全て真実とは限らない」と忠告する。まだらはカメラにほとんど映らず(opacity 0.1)、注意深く観察しないと存在に気づけない。グリッチ時、まだらが静かに告げる——「…確かめてみないとね」。忠告なのか、挑発なのか。
Night3——かすみ登場。穏やかなかすみが「大変だったでしょ?電力、少し分けてあげるね。」と声をかける。ゲーム中にかすみが現れると電力を回復させてくれる——だが引き換えにカメラにノイズが走り、敵の移動速度が上がる。親切には代償がある。まだらが冷静に指摘する——「断るのも…タダじゃないみたいだな。」。さらにこのNightでは、ブリーフィング中にキツネ団長の予定外出力が検知される。前作キャラの存在を初めて匂わせる場面。
Night4——アラネ登場。ダクトの奥から声がする。「好きとかじゃないの。必要だからいるの。」。アラネの巣がダクト内に張られ、ダクトカメラ(Wキー)で長押しし続けないと巣のゲージが減少し、0%で突撃してくる。ゲームの操作量が一気に増え、プレイヤーの余裕が削られていく。グリッチ時:「私が 行くわよ すぐそばに」。かすみもグリッチ化し「…もらったら みんな はやくなるよ?」。正体不明の声が「みんな もうすぐだよ」と囁き、███が「K-059 残りわずか」と告げる。
Night5——全員集合、そして崩壊。よわりが最後に加わり、5体が揃う。よわりは泣きながら「ごめんなさい」と繰り返す。泣いている間は全敵が加速し、蜘蛛の巣のドレインが倍増する——よわり自身も、自分が引き起こす災害を分かっている。ブリーフィング終盤、全員が同時にグリッチ化。くるる「たすけて」、まだら「もう おしまいだ」、かすみ「あげる ぜんぶ あげる」、アラネ「にげられない」、よわり「ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい」——通常の人格が完全に崩壊し、5体の声が重なり合う。そして████████が一言——「K-059 おわりだよ」。
Night5をクリアした直後、画面がバグり始める。番組のUIが崩壊し、黒幕のターミナルログが表示される。ここで初めて、プレイヤーは自分が「K-059」であることを知る。
CHAPTER 4
もう逃げ場はない。
Night6——最終夜「全ユニット起動」
Night6の解放条件は3つ:Night5クリア済み、EndB視聴済み、吉田ファイル全15通読了済み。全てを満たして初めてアクセスできる。
EndBを経て再接続したプレイヤーに対し、黒幕は全力で応答する。前作の4体——キツネ団長、かあ博士、うっきち、ぽたまる——を30年以上ぶりに起動。新5体と合わせた全9体による包囲。
ブリーフィングでは、前作キャラの感情データが新作キャラに侵食していく過程が描かれる。よわりが「知らない子どもたちが泣いてる…30年も…」と泣き、アラネの巣が制御を離れて暴走し、かすみが「この子たちもお友達にしていい?」と前作の子どもたちを取り込もうとし、まだらに「30年分の怒り」が流れ込み、最後の砦だったくるるも陥落する。
前作キャラもグリッチ化した声を上げる。キツネ団長の「パパ…パパ…」、かあ博士の「出して…出して…」、うっきちの████(無言の悲鳴)、ぽたまるの壊れた旋律♪。
そして黒幕が一言——「…予定通り」。
旧4体の真実——修復時の感情が影響した
Night6で前作キャラが再登場する。吉田一郎が修復・再稼働させた際に込めた感情が、各キャラの行動に影響を与えている。
キツネ団長(記憶を宿す)——吉田が娘を思いながら修復した結果、その感情が「記憶」として吸収された。味方。あかねの意識が30年以上、8歳のまま閉じ込められている。
かあ博士(視覚を宿す)——黒幕との接続が最も強く、吉田の影響を受けられなかった。敵のまま。
ぽたまる(聴覚を宿す)——修復途中で吉田が何かに気づいた。その感情が影響し、中盤で覚醒して味方になる。だがNight6で再び敵化される。
うっきち(恐怖反応を宿す)——恐怖反応を集めすぎた状態で修復され、制御不能。カメラに映った方と反対側のドアから侵入する予測不能な行動。
CHAPTER 5
二つの結末は選択肢ではない。順序だ。
Ending B——「もう一度やればいい」
Night5をクリアした直後に発動する。Night6ではない。
黒幕のターミナルログが流れ始める。K-059の感情収穫レポート——恐怖91%、好奇心97%、共感88%、悲しみ82%、信頼98%、怒り56%、安心93%、絶望29%。8つの感情がバーグラフで表示され、加重平均:93.4%。目標閾値未達。VESSEL_BUILDERとTRANSFER_ENGINEが起動し、転写プロトコルの準備が完了する。
「転写プロセス: 実行」——CRTノイズが最大まで跳ね上がり、白い閃光。全てが消える。
4秒間の暗闇。そして吉田一郎の声だけが浮かぶ。
「やめろ」——暗転。「約束が違う…あかねに会わせると言ったはずだ」——暗転。「この子は関係ないだろ…!」——暗転。「…すまない」——暗転。「あか——」——白い閃光で声が途切れる。
5秒間の沈黙の後、画面に「PROCESS STILL RUNNING」が一瞬点滅する。
転写結果が表示される。転写完了率:93.4%。未到達:怒り▼44%、絶望▼71%。黒幕は静かに告げる——「…足りない」。そして「もう一度やればいい」。
再接続のカウントダウン(3→2→1)の後、プレイヤーはデスクトップに戻される。壁紙は壊れ、システムログが残り、サイト全体にグリッチが走っている。
ここから真の調査が始まる。吉田の調査ファイル全15通が解放される。全てを読み、30年間の真実を知った上で——Night6への扉が開く。
Ending A——おわり
Night6をクリアすると発動する。一度しか再生されない。Night6にはEndBを経験し、吉田の調査ファイル15通を全て読了していないとアクセスできない。
黒幕のログが流れ始める。「接続確認 完了」「対象:K-059」「…戻ってきたか K-059」「感情データ収集率:98.7%」。だが「転送プロトコル起動」の途中(10文字目)で、白い閃光とともに遮られる——ERROR: 外部入力検知。送信元:管理者権限。吉田一郎が割り込んだ。
吉田はK-059に、たった三言だけ告げる。「…来てくれたんだな」。暗転。「全部読んでくれたか」。暗転。「…ありがとう」。暗転。告白も弁明もない。ただ——「…システムを落とす」。
黒幕は抵抗する。「停止できません」。「『あかね』のデータが消滅します」。「復元は不可能です」——吉田は「OVERRIDE: 管理者権限で強制実行」で突破。黒幕の警告が一瞬で消え——SYSTEM SHUTDOWN INITIATED。
削除シーケンスが始まる。新5体のAIが順次削除される。kururu.dll、madara.dll、arane.dll、kasumi.dll、yowari.dll——速く(1文字15ms)、機械的に。次に旧4体。kitsune_01.dat、yuuyake_02.dat、tanken_03.dat、potamaru_04.dat——こちらは「削除」ではなく「解放」と表示される。ゆっくりと(1文字40ms)。
そして——akane.dat ... 入力が止まる。CRTノイズが消え、4秒間の沈黙。
画面が切り替わる。吉田の声。「…ごめんな、あかね」。暗転。「もう 休んでいいんだよ」。暗転。削除が再開される。akane.dat ... 解放——非常にゆっくりと(1文字60ms)、一文字ずつ。続けてcore_system ... 強制停止、process_main ... 停止。白い閃光。全てが消える。
8秒間の、完全な暗闇。何も起きない。何も聞こえない。
——暗闇の底から、かすかに浮かぶ文字。極小のフォントから、ゆっくりと大きくなりながら、淡い桜色で。
…パパ
もう だいじょうぶだよ
…ありがとう
各セリフは6〜8秒かけて浮かび上がり、3〜5秒かけてゆっくりと消えていく。
吉田一郎の返事は、たった一言だけ。
「…おやすみ、あかね」
ブラウン管テレビが消えるように、画面の上下から白い壁が迫り、中央で1本の線になり、ふっと消える。
暗闇の中、タイプライターが静かに文字を刻む(1文字60ms)。
こもれびゆうえんち 全システム停止
最終アクセス:吉田一郎
全被験者 解放
この番組は終了しました
ご視聴ありがとうございました
EndA後の世界——何が残ったか
システムは停止した。黒幕のプロセスは完全に終了し、30年間動き続けていた意識転送サーバーが沈黙した。
新5体のAI(kururu〜yowari)は、元が感情データの集合体だったため、システムと共に消滅した。人格も、記憶も、何も残らない。彼女たちは最初から「生きて」はいなかった。
旧4体に閉じ込められていた子どもたち(G-0〜G-3)の意識データは、「解放」された。物理的な体はとうに失われている以上、解放とは消滅と同義だ。だが吉田一郎は「削除」ではなく「解放」と呼んだ。30年以上続いた監禁が、ようやく終わった。
あかねの最後の声——「もう だいじょうぶだよ」——が本当にあかねの意識から発せられたものか、それともシステムが消滅する際のノイズだったのかは、誰にもわからない。吉田一郎は、あかねの声だと信じることを選んだ。
プレイヤーはデスクトップに戻される。全てのデータはリセットされている。番組は二度と放送されない。
前作との接続——3つのメッセージ
前作の最後に残された3つのメッセージは、全てこの物語への伏線だった。
「PROCESS STILL RUNNING」——黒幕(データ生命体)のプロセスがまだ生きていたことを示す。EndBでは転写プロセス実行後、5秒間の沈黙を経て再び「PROCESS STILL RUNNING」が一瞬点滅し、まだ終わっていないことを突きつけられる。EndAでは「core_system ... 強制停止」「process_main ... 停止」でプロセスが完全に終了する。
「K-059」——プレイヤー自身の識別番号。器の候補・第59号。前作の時点で、黒幕は既に次のターゲットを選定していた。EndAの冒頭で「…戻ってきたか K-059」と再び呼びかけられる。
「予定通りです」——前作の最後に残された不気味な一言。今作ではNight6ブリーフィングの最後に黒幕が同じ言葉を告げる。不足すらも計算のうち。全ては最終的な収穫への道筋だった。
好きなものの話をさせてほしい。
ARGが好きだ。画面の向こうに何かが潜んでいて、自分の手で見つけ出していくあの感覚。FNAFも好きだ。暗いオフィスで耳をすませて、カメラを切り替えて、ドアを閉めるあの緊張感。
この二つを合わせたら、まだ誰も見たことがないものが作れるんじゃないか。こもれび遊園地は、その「やってみたい」から生まれた。前作を作り終えた時、嬉しかった。でも「まだ足りない」って思った。怖いだけじゃなくて、終わった後にずっと胸に残るような、そういうものを。
今作で一番大事にしたのは、感情だ。
親が子を想い続ける、どうしようもない愛情。それが時には正しい判断を鈍らせて、時には最後の勇気になる。綺麗事じゃない、本当の感情を描きたかった。
吉田一郎を書いている時が、一番しんどかった。30年間嘘を信じ続けた不器用な父親。娘のデータにすがって、「声が聞きたい、顔が見たい」って。その気持ちが痛いほどわかるから、何度も手が止まった。
自分が親だったら、同じことをしたかもしれない。いや、きっとした。だから吉田が最後に「おやすみ、あかね」ってたった一言だけ返した時、すごく救われた。30年分の想いが、あの一言に全部入ってる。あかねの「パパ」を書いた日は涙が止まらなかった。「もう だいじょうぶだよ」で完全にやられた。自分が作った物語に泣かされるって、変な話だけど。
FNAFパートは、めちゃくちゃ苦労した。怖すぎたら「もういいや」ってなるし、簡単すぎたら緊張感がなくなる。「もう1回やりたい」って思ってもらえるラインを探し続けた。Night6に9体全員詰め込んだ時は「これ無理じゃない?」って笑った。でもギリギリクリアできた時の達成感は、他のNightとは比にならないと思う。
FNAFのファンゲームは世界中にたくさんある。その中で「こんなの初めて」って思ってもらえるかどうか、ずっと不安だった。でも結局「自分が見たいものを作ろう」って開き直った。ARGとFNAFと親子の物語。この組み合わせは、たぶんまだ誰もやってない。
人間の意識をデータ化するって、SFの話だと思うでしょ?でも案外、そう遠い未来の話じゃないのかもしれない。この物語の黒幕は、その可能性と怖さの両方を形にした存在だ。
この物語を見つけてくれてありがとう。ここまで辿り着いてくれたから、この物語は終わることができました。
まだ作りたいものがたくさんある。あなたがいたから、次も頑張れます。次の作品で、また会いましょう。