社内回覧メモ #01 — スタジオ使用規則の変更について
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社内回覧 ※取扱注意
日付:1993年4月12日
差出人:山本修三(プロデューサー)
宛先:全スタッフ
件名:スタジオ使用規則の変更について
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各位
本日より、スタジオの使用規則を以下の通り変更いたします。
1. Aスタジオの使用は原則として9:00〜18:00とする。
2. 18:00以降のAスタジオ立ち入りは事前許可制とする。
3. Bスタジオは引き続き倉庫として使用する。████████████████████
4. 夜間(22:00〜06:00)の建物内立ち入りは、許可を受けた者のみとする。
上記規則は即日適用とします。ご不明点があれば山本まで。
以上
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番組スタッフ注記:このメモの3項目にある黒塗り部分は、原本の段階ですでに黒マジックで消されていた。よわりが透過光で確認を試みたが、判読できなかった。なお、この時点でプロデューサーの山本氏が「Bスタジオ」の存在を公式に認識していたことが分かる。
社内回覧メモ #02 — 収録に関する注意事項
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社内回覧 ※取扱注意
日付:1994年2月8日
差出人:████████
宛先:収録担当スタッフ
件名:収録時の注意事項(追加)
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以下の事項を厳守すること。
1. 収録中、出演する子どもたちを制御室に近づけないこと。
2. アニマトロニクスのメンテナンスパネルに子どもが触れないよう注意すること。
3. 収録の合間に子どもが「頭が痛い」「眠い」と訴えた場合は、休憩室で休ませること。████████████████████████████████████
4. 収録後、子どもたちの保護者に対しては「楽しく収録できました」と伝えること。収録内容の詳細は話さないこと。
5. ████████████████████████████████████████████████████████████████
以上の事項に違反した場合、即時契約解除とする。
以上
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番組スタッフ注記:差出人がプロデューサーの山本氏ではなく、黒塗りの人物であることに注意。3項目と5項目の黒塗り部分が特に気になるが、原本でも判読不能。「保護者に詳細を話すな」という4項目は、通常の収録では考えられない指示。
社内回覧メモ #03 — キャスティングに関する変更通知
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社内連絡 ※極秘
日付:1993年9月28日
差出人:████████
宛先:山本修三、佐藤真一
件名:出演児童のキャスティング変更について
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下記の通り通知する。
10月収録分より、出演児童の一部を以下のリストの児童に差し替える。キャスティングの決定権は今後、当方で行う。佐藤演出には事前にリストを渡すが、選考理由についての質問には応じない。
追加キャスト(10月分):
・████ ██(6歳・女)
・████ ██(5歳・男)
・████ ██(7歳・女)
上記児童の保護者への連絡は当方で行う。事務所を通さない直接手配のため、通常の出演契約書は使用しない。████████████████████████████にて処理する。
なお、本件に関する一切の問い合わせは当方宛とすること。
以上
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番組スタッフ注記:このメモは、演出の佐藤真一氏が証言していた「知らないうちにキャスティングが決まっていた」件の裏付けとなる文書。事務所を通さず、通常の契約書も使用しない——極めて異常な手続き。
社内回覧メモ #04 — 吉田一郎からの申し入れ書
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申し入れ書
日付:1996年8月15日
差出人:吉田一郎(セット設計)
宛先:████████ 殿
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繰り返しお願いしていることですが、改めて書面にてお伝えします。
娘を返してください。
あなたが約束したのは「検査」だけだったはずです。1987年のあの日、あなたは「すぐ終わる。娘さんの発達に役立つ」と言いました。私はそれを信じた。
しかし現実はどうですか。娘は████████████████████。もう9歳になるはずなのに、████████████████████████████████████。
あなたがこの会社で何をしているのか、私にはもう分かっています。番組は隠れ蓑でしょう。本当の目的は████████████████████████████████████████。
これ以上続けるなら、私は然るべき場所に報告します。
最後の警告です。
吉田一郎
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番組スタッフ注記:この文書は資料倉庫の段ボールの底から、他の書類に挟まれた状態で発見された。吉田一郎氏がセット設計という立場にありながら、番組の裏の活動を認識し、かつ自身の娘が巻き込まれていたことを示す重要な証拠。「1987年」の日付は、会社設立前にすでに吉田氏の娘に対する何らかの「検査」が行われていたことを意味する。
社内回覧メモ #05 — 最終通告
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【最終通告】
日付:1997年7月28日
差出人:████████
宛先:全関係者
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本プロジェクトは本日をもって終了する。
以下の処理を速やかに実行すること:
1. プロジェクト関連資料の全廃棄(紙媒体・電子データともに)
2. 被験者記録の全削除
3. Bスタジオ内設備の撤去および原状回復
4. 音声データサーバーの初期化
5. アニマトロニクス4体の████████
6. 番組の最終収録を9月に実施。通常の最終回として処理すること
7. 収録後、Aスタジオのセットを即日解体
8. 本指示書自体も廃棄対象とする
プロジェクト参加者全員に対し、守秘義務の再確認を行うこと。違反した場合の措置については既に通知済み。
なお、吉田一郎の件は████████████████████████にて対応済み。
以上
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番組スタッフ注記:これが「廃棄指示書」の全文。既にdocuments.htmlで一部が公開されていたが、全文はここが初出。8項目の「本指示書自体も廃棄対象」であるにもかかわらず、資料倉庫に残っていたのは、誰かが意図的に残したのか、あるいは廃棄処理の漏れか。最後の「吉田一郎の件は対応済み」が何を意味するのか——吉田氏の申し入れ書(メモ#04)との関連を考えると、不穏な意味を持つ。
社内回覧メモ #06 — 山本プロデューサーの私的メモ
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私的メモ(回覧不要)
日付:1996年12月20日
山本修三
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もう限界かもしれない。
この番組が何のために作られたのか、最初は知らなかった。プロデューサーとして声をかけられた時、純粋な子ども番組だと思っていた。実際、最初の2年間はそうだった。
おかしいと気づいたのは1993年の秋。キャスティングが自分の手を離れた。知らない子どもたちがスタジオに来るようになった。夜中にスタジオが使われるようになった。予算が不自然に増えた。
聞いても答えてもらえない。「知る必要はない」と言われる。でも、この目で見てしまった。
Bスタジオの扉が開いていた日があった。中を見てしまった。あれは────
████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████
吉田さんの気持ちが分かる。あの人は娘を取り戻そうとしている。でも、自分には何もできない。家族がいる。守らなければならない人がいる。
この番組はもうすぐ終わる。あの人もそろそろ「完成」だと言っている。完成が何を意味するのか、考えたくもない。
番組が終わったら、すべてを捨てて逃げよう。家族を連れて。
このメモは燃やす。
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番組スタッフ注記:「燃やす」と書かれていたにもかかわらず、このメモは資料倉庫の段ボールの中に残っていた。山本氏が燃やし忘れたのか、あるいは燃やす前に持ち出されたのか。いずれにせよ、山本氏がBスタジオの中を目撃していたことが確認された重要な文書。黒塗り部分は原本の段階で黒マジックで消されている——山本氏自身が消したのかもしれない。
社内回覧メモ #07 — 松本幸男の技術レポート(非公式)
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技術メモ(個人記録用)
日付:1996年4月15日
松本幸男
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外部技術者による改修が完了した。3日間、一切立ち入れなかった。自分の担当するアニマトロニクスなのに。
改修後の動作テストを行った。結果を記録する。
■ キツネ団長
・可動範囲が大幅に拡大。首の回転角度が270度に(以前は180度)
・瞳の追従精度が異常に高い。カメラマンが「ずっとこっちを見てくる」と不快感を訴えた
・待機中の微動パターンが変更されている。以前はランダムだったが、改修後は呼吸のようなリズムになった
・内部に見覚えのない基板が追加されている。用途不明。シリアルナンバー削り取り済み
■ かあ博士
・翼の展開機構に新たなモードが追加。「包み込む」動き
・内蔵スピーカーから、プログラムにない音声が再生された(一瞬だけ)。内容:子どもの笑い声
■ ぽたまる
・太鼓のセンサーが変更されている。以前は振動センサーだったが、改修後は────何のセンサーか分からない
・体内温度が通常より高い(外装の触感で分かる)。機械的に説明がつかない
■ うっきち
・尻尾の動きに新パターン追加。人の手に巻きつく動き。力が強い
・最も変化が大きい。電源を切った状態でも瞳が数秒間光り続ける現象が2回確認された
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補足:改修後のアニマトロニクスは、もはや自分が設計したものとは別物だ。あの外部技術者たちは何者だ。彼らが持ち込んだ技術は、民生用のロボティクスのレベルではない。
一番怖いのは、4体の動きに「感情」のようなものが見えることだ。プログラムされた動きではない。何かに反応している。何に?
考えたくない答えが頭にちらついている。
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番組スタッフ注記:松本氏の技術メモは、紙媒体ではなくフロッピーディスクに保存されていた。よわりが資料倉庫の段ボールからフロッピーを発見し、アラネがデータを復元した。松本氏の「考えたくない答え」が何を指すのか——意識転移プロトコルの存在を知っていた可能性がある。
社内回覧メモ #08 — 伊藤和彦の退社届(添え書き)
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退社届に添えて
日付:1995年6月30日
伊藤和彦(キャラクターデザイン)
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一身上の都合により退社いたします。
以下は個人的な記録として残します。
私がデザインしたキャラクターたちは、最初は純粋に子どもたちのために作ったものでした。キツネ団長の冒険帽も、かあ博士の眼鏡も、ぽたまるの太鼓も、うっきちのバンダナも。全部、子どもたちが笑顔になるように考えました。
でも、あのキャラクターたちは今、私が想像したものとは違うものになっています。最近スタジオでキツネ団長を見た時、自分が描いたのと同じ顔なのに、まったく別の存在に見えました。
目が違う。私が描いた目は、子どもを見守る優しい目でした。でも今のキツネ団長の目は——何かを訴えている目です。助けを求めている目です。
私にはもうここにいることはできません。
吉田さん、あなたの娘さんのこと、知っています。私にできることは何もありませんでした。ごめんなさい。
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番組スタッフ注記:伊藤氏の退社は1995年6月。意識転移確認(1995年9月)の3ヶ月前。伊藤氏はキツネ団長の「目の変化」に気づいていた。デザインした本人だからこそ分かる違い——その目が「助けを求めている」ように見えたという証言は、あかねの意識転移とタイミング的に整合する。転移確認の「前」に目が変わっていたとすれば、転移は段階的に進行していたことになる。
社内回覧メモ #09 — 中村由紀の楽曲納品拒否通知
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件名:ED楽曲の差し替えについて
日付:1995年8月20日
差出人:中村由紀(音楽担当)
宛先:山本修三 殿
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山本さん
先日依頼された新しいED曲「さよならの向こう側」について、歌詞を確認しました。
この歌詞は私が書いたものではありません。誰が書いたのですか。
「さよならの向こう側で 待っているのは誰?」
「忘れた名前を 思い出すまで」
「ひとりぼっちの 暗い部屋で」
「声だけが 響いている」
子ども番組のEDとしてこの歌詞は不適切です。作曲の依頼は受けましたが、この歌詞では納品できません。
差し替えをお願いします。
中村由紀
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※手書きの追記(山本氏の筆跡と推定):
「████さんに報告済。歌詞の変更はできないとのこと。中村さんには曲だけ作ってもらえれば良いと伝えてください。——山本」
番組スタッフ注記:「さよならの向こう側」の歌詞を改めて読むと——「ひとりぼっちの暗い部屋で、声だけが響いている」——これがアニマトロニクスの中に閉じ込められた少女を歌っているように読めるのは、偶然か。歌詞を書いた人物は、あかねの状況を知っていた——あるいは、あかね自身が——
社内回覧メモ #10 — 田中恵子の「保険」
| 作成者 | 田中恵子(ゆめスタジオプロダクション 脚本) |
|---|---|
| 作成日 | 1995年末頃(推定) |
| 入手経緯 | 田中の元同僚・████氏が保管していたものを提供 |
| 形態 | 手書きメモ3枚(B5ノート破り取り)+ フロッピーディスク1枚 |
メモ本文(手書き・原文まま)
【1枚目】
████ちゃんへ
突然こんなものを渡してごめんね。
でも、もう私は会社を辞めることにしました。来週の金曜が最後です。
辞める理由は体調不良ということにしてあります。嘘です。本当の理由は書けません。いえ、書きます。このメモはそのために書いているのだから。
私はこの4年間、ゆめスタジオプロダクションの経理と総務を担当してきました。毎月の経費処理、請求書の管理、銀行との折衝。普通の事務仕事です。でも、1年前から——おかしな経費が増えました。
「Bスタジオ設備費」という名目で、毎月200万円から500万円の支出がありました。用途は「研究開発」としか書かれていません。請求元は「████████研究所」。この研究所を調べましたが、法人登記がありません。住所も架空です。
山本さんに聞いたら、「上からの指示だから処理してくれ」と言われました。それ以上聞くなという雰囲気でした。
【2枚目】
それだけなら、見て見ぬふりをしたかもしれません。
でも、先月のことです。私は残業で遅くなって、Bスタジオの前を通りました。いつもは鍵がかかっていて、私のカードキーでは開きません。でもあの日は——扉が半開きでした。
中を見てしまいました。
暗い部屋の中央に椅子がありました。医者が使うような椅子。周りに機械がたくさん。そして奥に——キツネ団長がいました。後ろが開いていて、中が見えました。普通のロボットの中身じゃなかった。何か——配線の他に——
うまく書けません。でも、あの部屋の空気は異常でした。子ども番組の制作会社にあるべきものじゃなかった。
そして、キツネ団長が——電源が入っていないはずなのに——首がゆっくり動いて、私の方を見ました。
逃げました。翌日、退職届を書きました。
【3枚目】
このメモと一緒に、フロッピーディスクを1枚渡します。
中に入っているのは、私が3年間処理してきた経費データのバックアップです。Bスタジオ関連の支出、不明な外注費、████████研究所への振込記録。全部入っています。
それから、社内のPCで見つけたファイルも1つコピーしました。「protocol_v4.1.doc」という名前のファイルです。内容は——読まないほうがいいかもしれない。でも、誰かが持っておくべきだと思いました。
████ちゃん、このメモとディスクは「保険」です。もし私の身に何かあったら——大げさに聞こえるかもしれないけど——然るべきところに届けてください。
何もなければ、そのまま持っていて。いつか必要になるときが来るかもしれない。来ないかもしれない。
ごめんね、こんな重いものを押し付けて。でも、あなたしか頼れる人がいなかった。
田中恵子
追伸:吉田さんのこと、覚えてる? セット設計の。最近、様子がおかしいの。娘さんが体調を崩したらしくて——でも、吉田さん自身も何か怯えたような顔をしてる。この前すれ違ったとき「あかねが帰ってこない」って呟いてた。何の話かわからなかったけど、今は——少しだけ——わかる気がする。
番組スタッフの注記
田中恵子のメモは、内部の人間が当時何を感じていたかを示す貴重な一次資料である。彼女は実験の全容は知らなかったが、「何かがおかしい」ことに気づき、証拠を保全した。フロッピーディスクの内容は復元アーカイブ#08(実験プロトコル)および会社の財務記録の裏付けに使用されている。
田中恵子の現在の所在については、staff_whereabouts.htmlで報告している。なお、彼女が見たBスタジオの光景——「電源が入っていないキツネ団長が首を動かした」——は1995年末、転移から数ヶ月後。この時点で既に、電源なしでアニマトロニクスが動く現象が始まっていた。——田中(調査)