お寄せいただいたおたより

投稿者:佐藤真一(元演出)/ 受付日:2026/03/30

佐藤真一です。木漏れ日遊園地の演出を担当していました。

ここに書かれていることの多くは事実です。知らないうちにキャスティングが決まっていたこと。台本のない回があったこと。夜間に何かが行われていたこと。全部本当です。

でも、書かれていないことが一つある。自分だけが知っていること。

1996年の冬、深夜に忘れ物を取りにスタジオに戻ったことがあります。誰もいないはずの時間でした。

Aスタジオの照明が薄暗くついていた。扉は施錠されていたけど、小窓から中が見えた。

キツネ団長が、ステージの中央に立っていました。一体で。他の3体はいなかった。

キツネ団長の前に、椅子が一つ置いてあった。椅子には小さな女の子が座っていた。白い服を着ていた。

女の子はキツネ団長を見上げていた。キツネ団長は女の子を見下ろしていた。二人とも動かなかった。でも——何かが通じ合っているように見えた。

そして、キツネ団長の口が動いた。電源は入っていないはず。スタッフもオペレーターもいない。でも口が動いた。

何を言ったか。小窓越しだったから聞こえなかった。でも口の動きは分かった。

「おかえり」

そう言ったように見えた。

その直後、女の子がこちらを振り向いた。暗闘の中で、目だけが見えた。

自分は逃げた。翌日から2週間、体調を崩して休んだ。その間にあったことは覚えていない。

あの女の子が吉田あかねだったのか。今なら、そうだと分かる。

あの時逃げずに、あの子を連れ出していれば。30年間、そのことだけを後悔しています。