「意識転移」。あの会社が研究していたのは、人間の意識をデータとして抽出し、別の媒体に移す技術だった。
俺は科学者じゃない。セットを作る職人だ。だから技術的なことは正確に説明できない。でも、あいつのシステムに残されていた文書を読んで、大まかな流れは理解した。
第1段階:スキャニング — 対象の脳波パターンを長期間にわたって記録する。検査室Aで行われていた「発達検査」の正体がこれだ。何回もスタジオに通わせて、データを蓄積する。
第2段階:変換 — 蓄積した脳波データを「意識パターン」としてデジタル化する。検査室Bの装置が使われた。この段階で対象の意識が「コピー」される…いや、「移動」するのかもしれない。文書には「不可逆的プロセス」と書かれていた。
第3段階:定着 — デジタル化した意識を受容体に定着させる。受容体とは…アニマトロニクスのことだ。キツネ団長、かあ博士、ぽたまる、うっきち。あの4体の「人形」に、子どもたちの意識が転送された。
被験者リストの最初のエントリはG-0。1995年9月に「意識転移確認」の記録。
G-0は…俺の娘だ。
「発達に良い検査がある」と言われて、俺が連れて行った。俺が。何も知らずに。いや…薄々気づいていたのかもしれない。それでも、あの会社の人間の言葉を信じたかった。
※ 意識転移後、元の体がどうなるかについての記録は見つかっていない。被験者の多くが「行方不明」として処理されている。