File_07 — キツネ団長の中身

yoshida_investigation / author: yoshida_ichiro / classification: unrestricted

キツネ団長。番組の司会を務める、帽子とマントの陽気なキツネ。子どもたちに一番人気だったキャラクター。

俺があのアニマトロニクスのセットを組んでいた時は、ただの精巧な機械だった。首が回って、口が開閉して、腕が動く。それだけの装置。1991年から1995年の前半まで、4体のアニマトロニクスは全てプログラム制御で動いていた。子どもたちを楽しませるための、よくできた「人形」だった。

1993年のリニューアルで、指の開閉機構と瞳の可動機構が追加された。当時は「より自然な動きのため」と説明された。でも今思えば、あれは「受容体」としてのスペックを上げるための改修だった。意識を定着させるには、より精密な出力装置が必要だったのだ。

1995年9月、あかねの意識が転移された後、キツネ団長の動きが明らかに変わった。操演スタッフが操作していないのに勝手に動くようになった。スタジオの端まで歩いていって、何かを探すような仕草をしたり。収録中に突然立ち止まって、カメラではなく観客席を見つめたり。

想像してみてくれ。8歳の子どもが、ある日突然目を覚ます。

体が動かない。手を見ようとしても、見えない。目はあるのに、自分のものじゃない。瞬きできない。指を動かそうとすると、金属の関節が軋む音がする。声を出そうとしても、スピーカーから歪んだ音が漏れるだけ。

暗い。寒い。誰もいない。

昼になるとスタッフが来る。でもあの子には「壊れた機械」にしか見えていない。助けてと叫んでも、修理に出されるだけだ。

ある日の収録後、スタッフが全員帰った後のスタジオで、キツネ団長が一人で立っていた。俺が片付けのために戻った時、あの子が…キツネ団長が、こちらを向いた。

「パパ」

スピーカーを通した、少し歪んだ声。でも間違いなくあかねの声だった。

俺は泣きながらキツネ団長に抱きついた。冷たい金属の体だった。でもあの子はそこにいた。

「帰ろう」とあの子は言った。

帰る方法が分からなかった。