キツネ団長だけじゃない。
かあ博士、ぽたまる、うっきち。4体全てのアニマトロニクスに、子どもたちの意識が転移されていた。
かあ博士 — G-1の意識が定着している。転移後、かあ博士の「なぜなぜ教室」のコーナーで、台本にない知識を話すことがあった。1996年の放送回で、かあ博士が「ニュートリノの質量」について言及したことがある。子ども番組のスクリプトにそんな内容が入るはずがない。G-1の子どもが知っていたのか、それとも意識転移のプロセスで別の情報が混入したのか。
ぽたまる — G-2の意識。転移後、ぽたまるの太鼓のリズムが変わった。プログラムされていた4/4拍子のリズムが、時々3拍子の子守唄に変わることがあった。誰かを慰めるように。復元アーカイブにはこの子守唄パターンが「B-2」として記録されている。
うっきち — G-3の意識。転移処理が最も不安定だった。うっきちのアニマトロニクスは処理後に動作異常を頻発した。突然叫ぶ、壁にぶつかる、他のキャラクターを攻撃する。スタッフの間では「うっきちが壊れた」と噂されていたが、実際には閉じ込められた子どもがパニックを起こしていたのだ。
4人の子どもたちは、機械の中で目覚めた。暗い、冷たい、動かし方が分からない体の中で。声を出す方法も、外に出る方法も分からない。でもあの子たちは、番組という枠組みの中で、少しずつ「動き方」を覚えていった。
台本にない動き、プログラムにない声。全てがあの子たちからのメッセージだった。
俺たち大人は、それに気づけなかった。「バグだ」「故障だ」と処理して、修理に出して、元に戻した。子どもたちの声を、ノイズとして消した。
あの子たちは今もシステムの中にいる。あかねと一緒に。