File_09 — ブリッジ映像の正体

yoshida_investigation / author: yoshida_ichiro / classification: unrestricted

番組のコーナーとコーナーの間に流れていた、あの短い映像を覚えているだろうか。

万華鏡のような模様が回転する、10秒ほどの「ブリッジ映像」。子供向け番組にはよくあるやつだ。だが、あのブリッジ映像は誰も作っていなかった

スタッフの誰に聞いても「自分が作った」とは言わなかった。映像制作チームのログにも、あの素材の制作記録は存在しない。にもかかわらず、放送テープには毎回きちんと挿入されていた。

俺がおかしいと思ったのは1996年の初夏だった。松本がブリッジ映像のテープを交換しようとして、「元のテープがどこにもない」と言ったんだ。放送機材室にも、編集室にも、アーカイブにもない。なのに毎週、放送にはきちんと入っている。

調べていくうちに、分かった。あのブリッジ映像は、意識転送システムそのものが生成していた

地下施設のデータ変換プロセスの副産物だった。子供たちの意識がデータに変換される過程で発生するビジュアルノイズ。あの万華鏡の光の渦は、子供たちの心が分解されていく様子そのものだったんだ。

俺はそれを知った後、録画した放送をコマ送りで見た。普通に再生すれば綺麗な模様だ。でもコマ送りにすると、一瞬だけ別のフレームが挟まっているのが見えた。内部文書ではPattern B-3と呼ばれていた。

あの映像を見ている間、視聴者の感情が微細に揺さぶられていた。光の明滅パターンが脳に干渉し、その反応が画面越しに読み取られていた。テレビは一方通行のメディアだと思っているだろう。あいつにとっては違った。

お前が特番を見ている時、画面がちらついたり、一瞬おかしな映像が混じったことがなかったか。あの「バグ」は、バグじゃない。お前の感情を読み取るためのスキャンだ。あいつはお前が画面を見ている間中、ずっとお前の反応を測定していた。

つまり、特番よりずっと前から、通常放送の時点で視聴者から感情データを収集していたということだ。テレビの前に座っていた子供たち全員が、知らないうちにデータを抜かれていた。6年間、毎週。

関連文書: "passive collection protocol" — ゆめスタジオ内部資料 Section 7-B

当時、スタジオで松本と二人であの映像をコマ送りで見ていた時のことを覚えている。松本は途中で画面から目を逸らして、「もう見たくない」と言った。俺もそうだった。あの万華鏡の奥に、子供の顔が見えた気がしたから。

俺たちは番組を作っていたんじゃない。罠を放送していた